ショッピングカート

ショッピングカートは空です。

ショッピングを続ける

2016 ワールドブリュワーズカップ 優勝者:粕谷さんのインタビュー・レシピ

コーヒー抽出を勉強すればするほど奥の深いものだと感じます。何かひとつの魔法のレシピがあるわけではなく、使用する豆、ロースト、器具、水など様々な要因が重なり合って一杯のコーヒーが抽出される。バリスタやカフェはそれぞれの環境によって一番適したレシピを使用しています。

 

だからこそ常に新しいメソッドを追及していくことは非常に大事なことであると考えています。特に世界スタンダードの人たちから。

 

今年のそのスタンダードのトップに立ったのが2016年Brewer Cup世界チャンピオンの粕谷 哲さん。茨城にあるCoffee Factoryのバリスタである粕谷さんのレシピ、抽出方法、そしてプレゼンテーションはどんなものだったのか?

 

英語のプレゼンを日本語に翻訳したものを共有したいとおもいます:

 

粕谷 哲さん2016年Brewers Cup優勝プレゼンテーション

ジャッジの皆様、こんにちは、ようこそいらっしゃいました。私はテツです。

日本の茨城県にあるコーヒーファクトリーから来ました。皆様のためにコーヒーを淹れられることをとても光栄に思います。

ベストを尽くしますので、皆様も私と同じく、この10分間を楽しんでいただければ幸いです。

私は生産者でも、焙煎者でもありません。ただのバリスタであり、ブルワーです。

したがって、今日にいたるまで、様々な抽出法を探し、学ぶことに情熱を注いできました。

そしてついに、最高の抽出法を見つけ出しました。それが 4-6式です。

ボードにはコーヒーファームについてと、4-6式の詳細が載っています。

この新しいメソッドのアイデアが生まれたのは、Ninety Plus Coffeeに訪れた時です。ファームでは、人々がお金のためだけに豆を集めているのではないことがよくわかります。彼らは自分達の仕事に情熱と誇りをもって働いています。それらは元をたどれば、Ninety Plus Coffeeのオーナーであるジョセフの、決して絶えることのないコーヒーへの情熱と、彼のもとで働く人々への深い愛情から生まれ来るものです。私は彼らの情熱に非常に心打たれ、バリスタとして、彼らの情熱を汲んだ抽出法を必ず見つけ出すことをその時心に決めました。

さて今日は、この4-6式で、皆様に最高のカップをお出ししようと思います。 4-6式は、まず注ぐお湯の全量を40%と60%に分けることから始めます。まず40%量のお湯を2回に分けてそそぎ、次に残りの60%を何回に分けて注ぎたいかを決めます。初めの2回が酸味と甘みのバランスを決め、残りの回数によってコーヒーの強さが決まります。

これだけです。いたってシンプルですよね?

今日はこの特別なコーヒーを使います。これはパナマのNinety Plus Gesha エステートのナチュラルプロセス・ゲイシャです。ハンドピッキングとコーヒーの処理に注がれる情熱が、彩り豊かなフレーバーを生み出します。そして今日は、抽出によってこのコーヒーをもっと素晴らしいものにしようと思います。

私のレシピは コーヒー20gと92度のお湯を300gです。このコーヒーのクリーンな味と華やかなフレーバーを引き出すため、粗挽きにしています。水は0.3ppmの純水で、PHは6.6です。これにより酸味が華やかで、クリーンかつジューシーなものになります。口当たりもなめらかでジューシーになります。

お湯の量は300gですので、初めの2回はあわせて120gです。ではジャッジの皆さま、実際に抽出に入りたいと思います。今日は、1回目では50gを注ぎます。

1回目と2回目それぞれのお湯の量で、最終的な酸味と甘みが決まります。1回目により多く注いだ場合は、酸味が強く、少なく注いだ場合は、全体的な甘みがより強くなります。

今日は甘みをより引き出すため、1回目の量は50gと少なくします。

そして2回目は残りの70gです。2回目により多くお湯を注ぐことで、甘みがより引き立ちます。

この抽出法では、毎回デキャンタに水分が落ちきってから次のお湯を注ぎます。なぜかと言うと、このタイミングが最も抽出を効果的にし、このような粗挽きの場合にコーヒーの強さをより出せるからです。

そして3回目です。3回目から先は、注ぐ回数が抽出の強さを決めますので、もし強くしたければ回数を多く、弱くしたければ少なくします。今回のような粗挽きの場合は、コーヒーが弱くなりがちですが、今日は1.3TDSを目標に抽出します。

回数は3回としますので、180gを3回に分けると1回60gずつですね。
注ぎ続けて・・・完成です。

 

この抽出法では、コーヒーが非常に クリーンで、華やかで、甘みのある力強いものになります。


裏側にはテイストノートがあります。このコーヒーのアロマは、桃とブラックチェリーです。
フレーバーは、熱いうちは桃とブラックチェリー、冷めてくるとイチゴやパイナップルが顔を出します。

後味はかなり後を引き甘いです。イチゴから次第にカカオへと変化します。私は、真に素晴らしいコーヒーとは、いつまでも甘みが残るようなものだと考えていますこれがまさにそのコーヒーです。酸味は華やかで、クリーンでジューシーであり、イチゴやパイナップルのようなフルーティーな甘みがあります。

ボディーはミディアムでジューシーです。冷めるにつれなめらかになります。非常にバランスがとれていて、完成されたまろやかさです。フルーティーな甘みが徐々に素晴らしい酸味を広げていくのが感じられると思います。

全体としては、このコーヒーは非常にクリーンかつ複雑なフレーバーを持ち、冷めるにしたがってユニークな変化を見せてくれます。酸味と甘みのバランスは素晴らしく、まさに完璧です。

 

ジャッジの皆様、私のコーヒーはいかがでしたか?
私は焙煎者ではありませんし、生産者でもありません。
私はバリスタであり、ブルワーですから、これからも抽出に自らの情熱を注いでいく所存です。

今日は皆様のためにコーヒーを淹れることができて、本当に嬉しく光栄に思います。

ジャッジの皆様、観覧席の皆様、そしてもちろんのこと、私をこれまで支え続けてくださった方々に心よりお礼申し上げます。
本当にありがとうございました。

 

質疑応答

 

司会者:おめでとうございます!ブルワーズ・カップに出場するのは初めてですか?
粕谷氏:いいえ、日本では3回目です。
司会者:3年目ということですね。しかしワールド・チャンピオンシップは初めて?
粕谷氏:はい、これが初めてです。
司会者:これが初回ということですね。
粕谷氏:はい。
司会者:初参戦で、決勝。今のお気持ちは?
粕谷氏:エキサイティングです!夢のような気持ちです。
司会者:一つ質問させてください。ジャッジのカップにコーヒーを注ぐ時、1回、2回、3回、それからもう少し、と、何度にも分けて注いでいらっしゃいましたね。なぜでしょうか?
粕谷氏:今回のコーヒーは、冷めるにつれ甘みが出るためです。そのため冷ましながら注ぎました。
司会者:つまりコーヒーが冷めるようにされていたのですね。
粕谷氏:はい、そうです。
司会者:それから抽出法についても、4-6式とおっしゃっていましたが、もう一度説明していただけますか?
粕谷氏: 注ぐお湯の全体量を40%と60%に分け、初めの40%で酸味と甘みのバランスを決め、残りの60%で抽出の強さを決めます。とてもシンプルな抽出法ですが、完璧なバランスです。
司会者:焙煎者と相談することはできましたか?様々な焙煎を試して決めたのか、たった一つで決めたのか、どちらでしょうか?
粕谷氏:コーヒーは私のボスであるジョセフが焙煎してくれました。Ninety Plus Coffeeのオーナーです。とても良い方です。
司会者:良い方ですね。
粕谷氏:はい。
司会者:ほかに何か言いたいことはありますか?ここにいる皆、支えてくれた人たちや、オンライン実況を見守ってくれている人たちなどにメッセージは。
粕谷氏:そうですね、何につけても、まずは「本当にありがとう」。本当に感謝しています。ありがとうございます。とてもエキサイティングな体験でした。
司会者:プレゼンテーションを見ているこちらにとっても本当にエキサイティングでした。素晴らしかったです。おめでとうございます!
粕谷氏:ありがとうございます!
司会者:日本ブルワーズ・カップ・チャンピオン、テツ・カスヤでした!

 

粕谷さんが"4-6 method"と呼ぶ抽出法とレシピをおさらいしてみましょう:

ドリッパー:ハリオV60 セラミック

20g コーヒー(粗挽き)

ナチュラルプロセスゲシャ、パナマ
92度のお湯 300ml (0.3ppm, PH 6.6)
蒸らし 45秒 (50ml)
0:45 70ml 注ぐ
1:30 60ml 注ぐ
2:15 60ml 注ぐ
3:00 60ml 注ぐ
3:30 ドリッパーを上げる

私たちも持ち合わせていたエチオピアYirgacheffeのナチュラルで何度か粕谷さんのプレゼンを参考に抽出してみました。

コーヒーのジューシーな部分と程よい酸味が感じられる一杯になりました。皆さんは今年世界のトップに立った"4-6 method"についてどう感じられましたか?