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Hoshikawa Cafe: 2016年12月 #クラスパートナーロースター

Kurasuが2017年最初にご紹介するロースターは、埼玉のホシカワカフェ。

日本一の猛暑日を記録し一躍話題になった熊谷市だが、普段はゆるやかなペースで時の流れる、落ち着いた場所だ。カフェの名前の由来ともなった星川沿いには彫刻が木漏れ日を受け、せせらぎの音の気持ち良い遊歩道がある。

そんな光あふれる散歩道にあるホシカワカフェで、店主の鈴木さんにお話を伺った。

店内は明るい色合いの内装と大きな窓が爽やかで、カウンター席とテーブル席から選ぶことが出来る。テーブル席には靴を脱いで上がるため、店全体のアットホームな雰囲気も相まって、まるで友人の家に遊びに来たような優しい気持ちにさせてくれる。平日でも盛況で、その人気ぶりがうかがえる。明るく清潔感があり、小さい子供でも安心して連れて来られる環境も、地元の幅広い年齢層の人々に愛される理由の一つだろう。

元々は音楽家として活動していた鈴木さん。学生時代から、大学に通いながらDJとして活躍するなど、多忙な日々を送っていた。しかし思うように道が開けず、世界を広げ、可能性を探るべくオーストラリアのアデレードに留学を決意。いつもたくさんの人々に囲まれて暮らしていた日本とは打って変わって、慣れない地で孤独を感じる事も多かった。そんな時に、「いつも誰かがいる場所」として暖かく鈴木さんを迎えてくれたのが、地元のカフェだったという。街にカフェがひしめきいつも人で賑わっているメルボルンに移住してからは、アデレードで出会ったカフェやコーヒーの魅力をもっと知りたいという気持ちに動かされ、特に心惹かれたスペシャルティコーヒーを扱うカフェを巡りはじめる。

以前から起業したいという思いを抱いていた鈴木さんの中に、カフェという道が生まれたのもこの頃だ。オーストラリアで築いた人間関係を基に、中国北京、韓国などでの起業も考えていたが、そんな時地元埼玉にグロリア・ジーンズコーヒーが関東初出店するとの話が飛び込んでくる。メルボルンでよく通ってはフレーバーコーヒーを楽しんでいたグロリア・ジーンズの開店は、コーヒー業界に飛び込むまたとない機会に感じられた。店への思い入れやコーヒーを仕事にしたいという想いが伝わり、見事店長として採用され、キャリアをスタートすることとなった。

その後1年半ほど、業界で経験を積み、見識を深めた後に退職し、独立した鈴木さん。店を出すのはやはり縁のある地元埼玉で、幼い頃によく訪れていた星川沿いに決めた。

 

無事開店したものの、店が軌道に乗るまでには3年ほどかかったという。当初は焙煎済みの豆を仕入れ、まずはスペシャルティコーヒーという新しいものを地元の人々に紹介するため、地域のお祭りやイベントなどに積極的に参加し、次第に知名度を上げていった。業界での人脈も徐々に広がりを見せはじめた頃、ノルウェー土産でティム・ウェンデルボーなどの豆に衝撃を受ける。それまで積み上げてきた関係から方向性を変え、一から全てやり直すほどの決意でノルウェーのコーヒーを主に扱いはじめることにした。

自家焙煎に踏み切ったのは約2年前のことだ。それまでは豆を仕入れる際に、収穫日、焙煎方法、焙煎日など豆の情報をデータでは受け取っていた。しかしそれらはあくまで紙の上の数字であり、実際それらが変わることでどう味が変わるのかを、自分で確かめてみたくなったという。それからは手で焙煎するなどして自ら研究を始めたが、趣味の範囲を超え、実際にオリジナルの焙煎を行ってみたいと考えるようになる。当時豆を仕入れるなど交流の深かったFuglenの小島氏らに相談し、まずは焙煎機を選ぶことから開始。様々な豆を比べた中で、プロバットが生む味わいに心惹かれることを再認識し、購入を決意。オランダからの輸入は1年かかったが、ついに1959年ヴィンテージのプロバットを手に入れることができた。現在は生豆はノルウェーに買い付けに行き、引き続きFuglenからも仕入れている。焙煎機のくせ、豆の個性などで幾通りにも可能性が広がっていく焙煎に夢中になるうちに、排気と釜の余熱で焙煎を調節するという、従来の「ハイロースト」「シティロースト」などの枠にとらわれない独自の焙煎方法が生まれた。この方法では、豆の外側をなるべく焼かず、内側まで均一に火を通すことができる。一見色は淡いが、歯で簡単に齧ってしまえる程中まで火が通っている焙煎に驚く人も多いという。

自らの焙煎も安定し、外から豆を仕入れる機会は減ったものの、今でもWEEKENDERS COFFEEの絶妙な焙煎、Fuglenの品質の高さ、更には彼らのラベルの美しさなど、まだまだ多方から新しい刺激を受ける日々だという。

開店から8年近く経ち、東京での知名度も上がり卸売もはじめた。飲食店に限らず、接客にコーヒーを提供するアパレルでも取り扱われている。

店頭での特別なこだわりは、毎度飲む人にコーヒー豆を選んでもらうことだ。一つずつ豆を嗅いでもらい、丁寧な説明をし、一対一の接客を行う。「毎回バリスタチャンピオンシップのつもりです」と鈴木さんは接客に臨む姿勢を語る。店に来て、何か新しい楽しみを見つけて帰って欲しい。もっとコーヒーのことを知ってもらいたい。豆の仕入れなど、グローバルに視野を広げると同時に、こういった草の根のような、ローカルでの活動が重要だと考える。

音楽を愛する気持ちは今も変わらず、定期的にアーティストを迎えては演奏イベントを開催している。コーヒー同様、心に響く音楽を選び抜き、カフェを訪れる人々と質の高い時間を共有しているのだ。紆余曲折を経て築き上げてきた、かけがえのない作品のようなカフェ。もっと良くしたい、新しいことにも挑戦したい、と、熊谷で輝く太陽のように、鈴木さんの心も燃えている。

 

豆詳細:

生豆: エチオピア、ノルディックアプローチ
・Samii Lot1 Celelectu

品種: エアルーム
精製方法: フルウォッシュド
収穫年: 2015/16
テイスティングノート: ブラックベリー、ストーンフルーツ、フローラル、ラズベリー
しっかりとしたボディー、赤、紫の果実を思わせるやや重厚な味わい。複雑な果実の風味と奥深い香り


・Burutukaana Lot2 Guji

品種: エアルーム
精製方法: ナチュラル
収穫年: 2015/16
テイスティングノート: スイート、トロピカルフルーツ、 カンタロープ、 フルーツ
トロピカルフルーツの華やかで、はっきりとしていながらまろやかな味わい。個性的でバランスのとれた甘さ
(参照: CropsterHUB)