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27 COFFEE ROASTERS (神奈川) : 2017年8月 #クラスパートナーロースター

次にご紹介する#kurasucoffee サブスクリプション提携ロースターは、神奈川県藤沢市、辻堂に位置する27 COFFEE ROASTERS。神奈川県を代表するスペシャルティーコーヒーロースターになるまでの20年間の歩みについて、代表の葛西さんにお話を伺いました。

 


コーヒーの世界に入ったきかっけ、今までの道のりを教えてください。
実は店を始めてもう20年になります。1997年に自家焙煎挽き売りと喫茶の店「自家焙煎かさい珈琲」として始めました。ちょうどシアトル系の大型チェーンショップが開店したタイミングでしたが、当時はスペシャルティコーヒーという言葉も出回っていませんでした。もともと海が好きで辻堂に住んでいて、会社勤めをしていたころは東京まで通勤していたのですが、東京も通勤も好きではなくて、ここで仕事をしながら住めたらいいなと考えたのが開業のきっかけです。ちょうどその頃に実家の工場が廃業することになり、商売をやってみないかと言ってもらいました。両親は宮城の出身で、コーヒー業者に勤めていた親戚がいたことから話が進んで、勢いでお店をオープンすることになりました。

特にコーヒー好きだったというわけでもなく、どこかで修行したり、コーヒーに関わる環境で勤務した経験もまったくありませんでした。現在のようなオープンな情報もありませんでしたので、初めは何をしたらいいのかすべてが手探りでした。皆はなぜコーヒーを美味しいと思うのだろう?そんな疑問から始めたぐらいですから、良くも悪くも品質判断の基準が定まっていなかったので、逆に自分の仕事やお客さんが求めているものを客観的に見ることができたかも知れません。好きすぎるあまり自分の思いを押し付けてしまうことなどもなく、一方通行にならないようなバランスも取れていた部分があったかも知れません。

その後2003年にスペシャルティコーヒーに出会い、それまでの昔ながらの喫茶経営からスペシャルティコーヒーにフォーカスしたお店の形に自然と少しずつ変化していきました。そして2012年、コーヒー豆販売と新しい焙煎機を導入した「27 COFFEE ROASTERS」としてフルリニューアルオープンしました。現在では現地の生産者や農協、輸出業者とのつながりを大切にし、品質重視の姿勢でセミナーやカッピングなども行いながら、おいしいコーヒーを伝える、「コーヒー嫌いだった人に振り向いてもらえるような1杯」を作っています。

 

 

コーヒーとの関係の転換期はどのようにして訪れましたか?

喫茶店では、凝り性なこともありますし、仕事は一生懸命やっていました。ただ、方向性が定まらないまま色々やってしまっていたんですね。当初はイートインもやっていました。「豆だけで売り上げを立てる事は難しいだろう」という思い込みもあり、お菓子を置いてみたり、フードメニューを変えてみたり…色々手を広げすぎてしまったんです。売り上げも安定していませんでしたし、自分自身店の中にこもって狭い世界にいたと思います。

そんな時、2003年に日本にSCAJが設立されて、スペシャルティコーヒーが入ってくるようになりました。そこでスペシャルティコーヒーのカッピングセミナーがあったので参加して、今まで飲んだことのない味にとにかくびっくりしたんです。これがコーヒーなのか!という驚きを感じたのを今でも鮮明に覚えています。その時は、すぐにそれがいいか悪いかはわからなかったのですが、とにかく今まで自分が飲んできたものと全然違った。そこから今まで何となく「スペシャルティコーヒー」と言われて買っていたものは何だったのだろう、本当にいいコーヒーというのはどうやったら買えるのだろうか、と考え始め、ぐいぐいとスペシャルティコーヒーに引き込まれていきました。

当時はカッピングもあまり行われておらず、情報を得るには本などで勉強していた程度で、海外からの情報や同業者との交流もほとんどありませんでした。しかしスペシャルティコーヒーに衝撃を受けて、これをちゃんとやれば道が開けるんじゃないか、そう直感したんです。それからはできる限り外に出て、セミナーにも参加し勉強しました。

そうするうちに、店の方向性も、コーヒーへの姿勢も自然と変わってきました。元々はカウンターがあって、ドリップやサイフォンがあって、喫煙もOKのいわゆる昔ながらの喫茶店だったのですが、まずは禁煙にして、フードの提供もやめて、と、徐々に変えていき、5年前には完全にリニューアルし、かさい珈琲から27 COFFEE ROASTERSへと名前も変えました。

 


大きな変化ですね。お客さんの反応はどうでしたか?

 

たくさんの人に反対されましたし、最初の反応は決して良くなかったです。正直な感想や思うところを言ってくれる人もいれば、何も言わずに来なくなってしまうお客さんもいました。ですが、それまで喫茶店をやっていたころは(これをずっとやっていくのかな)という不安があったところ、これなら安心して、信じてやり続けられるという風に思えたのがスペシャルティコーヒーだったんです。品質は嘘をつかない、そこをきちんと守っていればずっとやっていけると思って続けました。

 

新しいお客さんももちろん増えて、同じ価値観やコーヒーに対する興味をもってきてくれるお客さんが集まるようになりました。基本的には地元の人が多いですが、東京や、遠方からのお客さんも徐々に増えていっています。

 

 

 


27 COFFEE ROASTERSのコンセプトはなんですか?

 

とにかくシンプルに、10年、20年経っても同じようにやっていけるようなものを目指して作りました。半分は焙煎所、半分は抽出する場所として、この店に来れば一通り体験できるという場所にしたかったんです。余計なものを置かず、コーヒーだけに集中できるような店にしました。お客様の9割が豆を買われる方々なので、店内でドリップするフィルターにはV60などあまりマニアックでない器具を使い、豆を買ってくださったお客さんも同じように淹れられるようにしています。

 


27 COFFEE ROASTERS の焙煎、コーヒーについて教えてください。

 

20年前店を始めたころには誰も焙煎を教えてくれませんでした。コーヒー好きであれば自分のいきつけや好みの店がいくつもあって、そこでノウハウを教えてもらうなりやり方があったのでしょうが、そういうものがない、ゼロの状態からスタートしなければならず苦労しました。今はむしろ情報が多すぎるための苦労もあると思いますが、当時は原料の豆を仕入れるにもルートが限られていて、問屋さんにもあまり良いものが揃っていないという環境でした。その後共同購入グループ「C-COOP」に参加し、同じような境遇の仲間が集まる中でお互いに焙煎を学び、海外にも目を向けるようになり、一緒にアメリカなどの海外のロースターを訪問見学させてもらったりもして、徐々に経験を積んでいくことができました。

 

 

 

 

産地にも興味があったので、ニカラグアなどにも行きました。栽培しているのを実際に目の当たりにすると、生産者達の思いも汲んで、ちゃんと売りたいという気持ちが強まりましたし、COEなどの審査会にも行ってみたいと思うようになりました。それから審査員として参加すべくカッピングのスキルなども学び、2008年に初めてCOE審査会にオブザーバー参加しました。それからは毎年中米を中心に、つながりができている産地に行っていますが、オーストラリアやアメリカと比べると、産地とのつながりの歴史や深み、購入量には日本との歴然とした差を感じさせられます。日本は大手チェーンなどが主導する流れがまだまだ強く、個人ロースターはすぐに買い負けてしまうんです。その差を乗り越えていかなければ良いものは手に入れられません。すぐに解決するのは難しいでしょうが、日本なりのやり方があると考え、同じ目線で仕事のできる比較的小規模な生産者が多い中米とのつながりを構築しています。

現在、焙煎は自分とスタッフの4人チームでやっています。焙煎機にはローリングスマートロースター35kgを使用し、スペシャルティコーヒーの持つ爽やかな酸味や透明感、スムースな甘さを最大限に引き出す努力をしています。コーヒー豆の外側に過度なダメージを与えずに、豆の芯にしっかり熱を与えて風味を発達させています。

27 COFFEE ROASTERSでは、それぞれのコーヒーが持つ素材の味わい、長所を素直に表現し、味わっていただく事を大切にしています。

 

 

 

スペシャルティコーヒーへの移り変わりを経て、焙煎に対しての考え方は変わりましたか?

 

もちろん変わりました。初めは勧められるがままに買ったフジローヤル半熱風5㎏を使い、ずっと同じものを使っていたのですが、販売量が増えてきたり、スペシャルティコーヒーについてより深く知るにつれ、ある一定以上のレベルの焙煎を実現したいと考えるようになった時に、やはり限界を感じるようになりました。環境や設備を適切なものに整えることの大切さも実感し、大きな覚悟でしたが、まず2010年にローリングスマート15kg(日本1号機)を導入し、昨年の10月に35kg窯に入れ替えました。 

 

 

 

今後の展望について教えてください。

 

自分の関わった地域や地元でコーヒーをもっと広めていきたいです。うちの若いスタッフにも色々な所に行って見聞を広めていってほしいと思っています。結局、飲む人に美味しいものがきちんと提供でき、感動を与えられないと、先はないと思うんです。今、世界は空前のコーヒーブームです。今まで見向きもしなかった、資金力のある異業種や海外のコーヒーショップまでが次々と参入してきています。スタイリッシュにこの流れに乗っていれば、ある程度はやっていけるかも知れません。でも私たちの様な小さな業者は、生涯を通してこの商売を続けていかなくてはなりません。5年後、10年後と先を見据えてやっていかないといけないと思っています。

 

 

日本のコーヒー協会運営にも携わっている業界人の一人として、良いものは良いものとして、正しく伝えられるようにしたいと考えています。本質をしっかりと理解しなければ、大手チェーンなどに吸収されて終わってしまいますから。コーヒーを取り巻く環境や時代の流れが本当に早くて、すぐに結果を出さなければ埋もれてしまうかもしれません。形を取り入れて発信するのが長けている人たちもどんどん参入してきます。でも、核をもっていれば、ただの流行ものではなく、文化として根付かせることができると思っています。